ジュズダマ.jp |
【 ジュズダマとハトムギの違いについて 】
ジュズダマとハトムギは見分けがつかないほど似ていると言われていますが、よく観察してみると意外と違いがあります。 ハトムギは農耕の歴史と共に品種改良が繰り返されてきた穀物なのでジュズダマとは少し違いがある生態に変化しています。適正環境や栽培方法が多少異なります。 何処が違うのか、何故違うのか、どうして違いが生まれたのか等を観察・考察してみました。 まだ不明な点も多々ありますが、ジュズダマとハトムギの違いについて分析した結果を情報として掲載しています。 ハトムギの殻は指で押し潰せば割れる程度の硬さしかありませんが、ジュズダマの殻は非常に硬く素手で潰せるような硬さではありません。 ハトムギの殻は茶色や焦茶色といった色しかありませんが、ジュズダマの殻は白やクリーム、茶色、黒、灰色など様々で模様も多様です。 ハトムギの殻の形や大きさは品種に係わらず比較的そろっていますが、ジュズダマの殻は系統によって形や大きさにかなり違いがみられます。 ジュズダマの実は粘りが弱いうるち性、ハトムギの実は粘りが強い餅性です。 【 ジュズダマとハトムギの見分け方 】 ジュズダマの殻は表面に凹凸が無くツルツルしています。これに対してハトムギの殻は表面に縦筋の溝がいくつもあります。 ネット上では『ハトムギの花序は垂れ下がり、ジュズダマは上向きに付く』という引用をよく見かけますが、ジュズダマの雄花序も垂れ下がっており(雄花序が上向きの系統もあります ※1 )この引用は正しくありません。 正しくは花序ではなく殻(苞葉鞘)の向きの事であり『ハトムギの殻(苞葉鞘)は垂れ下がって結実し、ジュズダマは上向きで結実する』が正しい形態です。 引用が繰り返されていくうちに伝言ゲームのように解釈が変化してしまったのでしょう。 【 参考文献 】 日本の野生植物検索表 http://syokubutukensaku.o.oo7.jp/ineka33.html ジュズダマ属 ただハトムギも殻が上向きで結実する品種を見た事がありますので結実する向きだけでジュズダマかハトムギかを単純に判断できる訳ではないようです。ジュズダマにも突然変異で殻に縦筋の溝が入るものがあることから殻の硬さが最終的な判別基準です。 ※1 : ジュズダマには雄花序の長い系統と短い系統があり、雄花序の長い系統は垂れ下がっていますが短い系統は上向きのもあります。 ジュズダマの雌しべは白が通常です。たまに赤色や紫色の雌しべの系統がありますが、これはジュズダマとハトムギとの交雑種です。また硬くなる前の殻に赤色や紫色がかったものがありますが、これも交雑種にみられる特徴です。
【 発芽と生長の違いについて 】 ジュズダマの芽は黄緑色で赤みは全くありません。これに対しハトムギの芽はジュズダマと同じように黄緑色の品種もあるようですが、赤みがかっている品種が多いようです。
最初の1つ目が発芽にかかる日数はほぼ同じのようですが、ハトムギはほぼ一斉に発芽するのに対しジュズダマは2ヶ月にも渡ってバラバラに発芽してきて発芽に大きなバラつきがあります。 これは一斉に発芽してしまうと野うさぎなどの外敵に苗が一気に食べ尽くされて全滅してしまう恐れがあるので、これを防ぐ為に備わった機能の一つだと思われます。 ハトムギは生長にバラつきがあると作業効率が悪くなるので均一になるように改良されたのでこのような違いができたとみられます。 ジュズダマとハトムギの生長速度の差(左:ジュズダマ/右:ハトムギ) 生長速度はハトムギの方が圧倒的に速いです。並べてみると大差がついています。同じ日に播種して同じ日に発芽が始まったのにこれほどの大差がつくのは意外です。 雑草のジュズダマの方が生長が速いのではないかというイメージがありますが、「雑草は生長が速い」という固定観念を打ち砕く結果です。 間引きにより生長の遅い固体が淘汰され続けてきた結果なのでしょう。流石、穀物植物として人間に改良を繰り返されてきた植物なだけあるといったところでしょうか。 【 ジュズダマとハトムギの生態の違いとその理由の考察 】 発生する病害虫は基本的には同じとみられますが、ジュズダマとハトムギとでは同じ病気でも耐性に違いがみられます。 これはハトムギが品種改良が繰り返されてきた事と関係しているとみられます。 ジュズダマが多年草なのに対してハトムギは一年草です。 これはハトムギは毎年種子からの栽培を繰り返して越冬株を栽培しなかった為に越冬する能力が必要とされなくなり越冬能力が退化して一年草に変化したものと考えられます。 ジュズダマは作られた養分が実だけではなく越冬する為に根にも蓄えられていきます。 それに対してハトムギは収量を増やす改良が続けられた為に作られた養分が根に配分されてきた分まで実に集約されるようになってしまい、この事も越冬能力の退化を加速させた一因だと考えられます。 実はハトムギも凍結しなければ越冬はできるのですが、春になって芽が出てもほとんど生長できません。これは根に養分が蓄えられていない為で、根に養分を蓄える能力が無いのです。 ジュズダマの根を川穀根として活用するのに対してハトムギの根は川穀根代わりとして使う事はありません。つまりハトムギには根に養分や薬用成分を蓄える能力が無いので川穀根代わりとしては使えないという事のようです。 ジュズダマには赤や紫の色素はありませんが、ハトムギには赤や紫の色素があります。 人間が品種改良を繰り返している過程で得とくした機能とみられ、この色素はポリフェノールではないかとみられますが、その理由や役割は不明です。 ポリフェノールが植物細胞の生成、活性化などを助ける働きを持つ事からジュズダマと比べて生長が圧倒的に速い事と関係しているのかもしれません。 ハトムギはジュズダマとは違い自然には生えていません。畑で栽培したハトムギの実を全く取りこぼさずに収穫しているとは考え難いのでやはり殻の硬さが自然での生存を分けていると考えられます。 ハトムギくらい殻が柔らかいとネズミや昆虫、鳥などに食べられてしまい発芽するまで生き残れないのだと思われます。 ジュズダマの殻の硬さには実を守る為の絶大な効果があるという事なのでしょう。 ではジュズダマの殻の硬さはどれ程なのか。倉庫に保管していたジュズダマがネズミに食べられてしまった事があります。 食べられてしまった粒を調べてみると殻の欠けているものや虫の食害にあって殻に穴が開いていたものなど噛み砕きやすい殻を多く選んで食べていました。 なんとジュズダマの殻の硬さはネズミも苦戦するほどの硬さなのです。ここまで来るとネズミの食害に対抗する為にここまで硬く進化したとしか思えません。 それではジュズダマとハトムギの殻の硬さの違いは何でしょうか。調べてみるとジュズダマやハトムギの殻は苞葉の鞘が変化したものとあります。 葉付きジュズダマという先祖帰りとみられる突然変異からその様子が窺えますし、ハトムギの殻には表面に縦筋がありこれが葉脈である事からみても理解できます。 しかしこれだけではジュズダマの殻の硬さは説明がつきません。葉付きジュズダマをよくよく観察するとジュズダマの殻は葉脈が横に広がり葉脈同士がくっ付いています。 つまりハトムギの殻は葉を丸めて実の周りを覆っただけなのに対してジュズダマの殻は更に表面を葉脈の鎧で固めている状態なのです。これがハトムギとジュズダマの殻の硬さの違いを生み出しているのです。 しかし通常は葉が枯れても葉脈はここまで硬くなりません。どうやって葉脈の硬質化が発生したのかは謎です。 後日、情報を追記します。 |
【 参考文献 】 石田喜久男. 1981. ハトムギ -つくり方と利用法- 農山漁村文化協会 日本の野生植物検索表 http://syokubutukensaku.o.oo7.jp/ineka33.html ジュズダマ属 イー薬草・ドット・コム http://www.e-yakusou.com/sou02/soumm284.htm ジュズダマ 当サイトはまだ未完成の状態で掲載情報は継続的に追記更新しております。 新たな事実が判明した場合などに当サイトの情報を修正する場合がありますので当サイトの情報を利用・引用されます場合にはご注意下さい。 掲載内容に対するご指摘や掲載してほしい情報等があります方はお問い合せフォームからどうぞ。
© 2016-2019 広井孝一
|