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このページはジュズダマの栽培に関する情報とアドバイスを掲載しています。
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【 ジュズダマ栽培のアドバイス 】
ネット上ではジュズダマの栽培方法についての情報がほとんどありません。
これはジュズダマは単なる雑草扱いで園芸植物ではない為、栽培研究している人がいないからなのです。
そこでジュズダマの栽培方法についての情報を掲載しておきます。
一般の方には扱えない方法や無関係な方法も掲載してありますが、今までに無い栽培方法を試してみたい方向けに参考となる情報として掲載しています。

説明を読むと栽培のめんどくさい植物と思ってしまうかもしれませんが、少し手間はかかりますが栽培のコツさえ掴めばさほど難しくはありません。
観賞目的の栽培と収穫目的の栽培とでは栽培方法が異なってきます。色々な栽培方法を想定して説明を掲載しています。その中からご自身が行いたい栽培方法に関係した項目だけピックアップしてご活用下さい。

近種のハトムギとは適正環境や栽培方法が多少異なります。ハトムギは農耕の歴史と共に品種改良が繰り返されてきた穀物なのでジュズダマとは少し違いがある生態に変化しています。
ジュズダマでも水路に生えているものと畑に生えているものとでは適正環境が若干異なるものがあり、畑に生えているジュズダマを水辺に植えると育たない場合があります。

種子は呼吸をしています。保管する際に完全密閉してはいけません。(完全密閉してしまうと種子が放出する水分でカビが生えてしまいます。)
野生種の発芽率は1年目97~95%、2年目17~4%、3年目2~0%です。但し保管状態によって発芽率は変わります。
発芽率からみて実ってから2年以上経ってしまった種子はほとんど発芽しないと思って下さい。
※: この数値は発芽実験によるもので販売している種子の発芽率を保証するものではありません。

【 種蒔きについて 】 種まきの時期、播種
種蒔きは関東なら4月中旬~5月上旬です。(5月下旬でも間に合いますが、6月では生長しきらないうちに花期を向かえてしまいます。)
そのまま種蒔きすると発芽日に大きなバラつきが発生します。(2ヶ月間にわたりまばらに発芽してきます。)
冷めた風呂(20度くらい)に一晩漬けて種蒔きすると比較的一斉に発芽します。

※: 近年の研究により冬を越えたと感じないと春に発芽しない系統がある事が分かってきました。雪が積もる地域で環境に適応して生態が変化した系統だとみられますが自生しているジュズダマの何割くらいがこの系統なのかは分かりません。
この冬を越えたと感じないと春に発芽しない系統を栽培する場合には気温が5℃以下まで下がる所で2ヶ月以上保管するか冷蔵庫で2ヶ月以上保管して冬を越えたと感じさせる越冬処理が必要なようです。冷蔵庫で保管する場合には乾燥を防ぐ為、水に漬けてからジッパーの付いた袋に入れて保管します。 一斉に発芽させる必要が無いならば冬になる前に種蒔きしてしまうのも一つの手段です。
長年種子を採取して栽培してきたジュズダマならこのような生態変化が起きていないので越冬処理は必要ありません。

※: ジュズダマの種子は発芽に15度以上の温度が必要です。15度以下の水に漬けたのでは発芽促進になりませんのでご注意下さい。
※: 種蒔きした後で土中温度が15度を下回ってしまうと発芽の生長が止まってしまい発芽促進の効果がなくなってしまいます。発芽促進を行う場合には種蒔きは最低気温が10度を下回らなくなってからした方が良いです。
※: ジュズダマの種子は15度以上で発芽はしますが、気温が20度を超えないとほとんど生長しません。気温が20度を超えない前に種まきしてしまうと発芽後、気温が20度を超えるまで葉が1~2枚の状態で生長が停滞します。 この状態になると草食動物だけでなく鳥や猫にも食べられてしまう事がありますのでご注意下さい。

種子は1cmくらいの深さに蒔きます。3cmくらいまでの深さなら問題なく発芽しますが、あまり深くすると地表に芽が届くまでに力尽きて枯れてしまうものが出てきますのでご注意下さい。

発芽には酸素が必要な為、水に沈んだ状態だと発芽しません。
※: 毎日水遣りをしてしまうと土が含んだ水で蓋をされた状態になり酸素が不足して発芽しません。種蒔き後の水遣りは地表が乾き出した頃にかける程度にします。
湿り気が足りない状態でも発芽しない為、発芽するところを観察したい場合には湿らせたパーライトに殻を縦にして尖った先端が見えるくらいに埋めるのが良いです。
※: パーライトだけでは育ちません。種子に蓄えられた栄養だけで育つのは3枚目の葉が出てくるところまでです。

種蒔き後、順調に発芽すると9日目に発芽が始まり11日目~14日目の間に発芽のピークを向かえます。
※: 直射日光によって地表が温められる場所に蒔いた場合です。天候によっては3日程度ずれる場合があります。
ジュズダマの芽
ジュズダマの芽
トウモロコシの芽によく似た芽が出てきます
ジュズダマの発芽後の生長過程
発芽後の生長過程(気温25度以上の場合)
気温20~24度では同じ大きさになるのに2倍程度の日数がかかります。

苗として育ててから移植する場合の種蒔き
発芽後は根が急速に伸びますので苗として育ててから移植する場合にはあまり小さなポットだと生長を阻害してしまいます。最低でも容量が150ml以上の容器が必要です。
種蒔きの容器はコンビニや100円ショップで売っている透明のプラカップ(200mlくらいのもの)がお勧めです。
これなら土の中の湿り具合や根の張り具合が直接見えて確認できます。
ジュズダマの根は水没していても問題無いので水抜き穴は要りません。
種蒔きの容器

移植せずに栽培する場合の種蒔き(直蒔き)
トウモロコシやハトムギなどの栽培においては1ヵ所に3粒ずつ蒔いて元気の良い1本を残してあとは間引きするといった方法がよく行われています。
この方法は一斉に発芽するよう改良された作物では作業効率の良い方法ですが、ジュズダマはまばらに発芽してくる上に トウモロコシやハトムギに比べ分蘖の出てくるタイミングが早いので初心者には発芽した芽との区別がつき難く間違えて分蘖を引き抜いてしまったり後から発芽した芽を引き抜き損ねたりしがちです。 後から発芽した芽を引き抜き損ねて一ヶ所に複数株生えてしまうとお互いが生長を阻害し合い生長が悪くなってしまいます。

そこで一つの穴に3粒入れるのではなく1粒ずつ3cmほど離して三角形に配置して種蒔きします。 こうすれば初心者でも分蘖と後から発芽してくる芽とを間違えずに見分ける事が出来ます。
先に発芽した芽より後から発芽してきた芽の方が生長が良いといった事もよくある事ですので葉が3枚になるまで生長の様子をみてから間引きの判断をするようにします。
※: ハトムギにおいては間引きをせずに1ヵ所に数株まとめて生やさせる栽培も行われていますが、ハトムギは密生栽培でも育つように改良されているのでジュズダマとは異なります。

【 発芽後の管理について 】 植替えの時期
苗として育ててから移植する場合には葉が4~5枚になった時にします。但し、ポットで育苗した場合はポットのサイズによって移植タイミングの苗サイズが違ってきます。 ポットから抜いた際に土が崩れない程度に根が張った状態が移植のタイミングです。
移植は早過ぎても遅過ぎても生長を阻害しますのでご注意下さい。
移植のタイミング
透明のプラカップ(200mlくらいのもの)に種蒔きした場合の移植時はこのくらいの時です
移植のタイミング
根の張り具合がこのくらいの時が移植時です

プラカップから引き抜く時に引っ張っても抜けない事があります。これはプリンなどと同じように底の方に空気が入らない事によることと根が張る事で膨張圧力で土がプラカップに圧着してしまう為です。 そこで食器のナイフを側面に沿って1週差込みプラカップに圧着している土を剥がします。すると底の方に空気も入るようになり引き抜けるようになります。
※: ナイフはペーパーナイフを使うと洗う時に手を怪我する危険がありますのでディナーナイフやデザートナイフなど食器のナイフを使った方が安全です。竹ヘラだと厚みがあるのでうまく差し込めない事があります。

もう一つの移植方法として発芽直後(3日目まで)の苗を引抜いて移植する方法があります。
発芽後3日目までならまだ根が定着しておらず、毛根も出てきていないので生長を阻害せずに移植できます。
苗を引抜く時は芽をつかむのではなく殻をつかんで引抜きます。

※: この方法はポットなどを使わずにプランターで種蒔きから移植までを行いたい場合に使える方法ですが、移植できる期間が短い上に発芽日にバラつきがあるので1日にまとめて作業をするといった様な事はできません。
※: この方法は殻の先端が土の表面に出るくらい浅植えに種蒔きする必要があります。3cmくらいの深植えにしてしまうと芽が地表に出るまでに根が伸びてしまい引抜いた時に根が千切れてしまう事があります。

移植は苗と苗の間隔を30cmくらい空けて1本ずつ植えます。密集して生えるとお互いが生長を阻害しあうので1ヶ所に数本まとめて植えるのは良くありません。
苗としてポットなどで育てた場合には土ごと移植します。移植する時に根から土を落としてはいけません。苗の毛根を傷めると生長を阻害してしまいますので、ほぐす必要はありません。

湿地や水辺に生える植物なので水を多く必要とします。毎日水やりする必要はありませんが、土が乾燥しないようにします。
今までの栽培経験上、肥料は骨粉と油かすが一番合っている様です。
※: 骨粉と油かすを湿った土に置き肥すると線虫が発生します。ジュズダマへの影響は無いようですが、線虫が嫌いな方は使わない方が良いかもしれません。

十分生長すると12~15節、草丈150~180cmくらいになります。
生長は土の養分状態に大きく影響されます。また、日照不足でも生長不良になりますのでできるだけ直射日光の当たる時間が長い場所が良いです。
地域種と系統によっても違いがあります。

《 日本に自生する主な系統の特徴 》
※: 日本に自生する主な系統の特徴という形で株の形成の特徴について掲載しておりましたが、環境の状況によって形態が変わる環境変異型形態の特性である可能性が浮上してきました為、 不確実になりましたこの掲載文は削除致しました。(2017.06)

実が生るのは9上旬~11月下旬頃ですが、天候や生長状態に影響されます。
1株から300~1000粒生ります。同じ草丈まで生長しても実の生る量には個体差がかなりあります。
※: 小粒が生る系統の場合です。大粒が生る系統の場合はその半分の150~500粒くらいです。

自家受粉もする為、一株しかなくても種子が生ります。受粉しないと殻は固くなりません。
※: 自家受粉を繰り返すと発芽率が低下します。毎年繰り返し栽培するなら一つの株から採れた種子だけを栽培するのは好ましくありません。
ジュズダマの受粉前後の殻の色
受粉前後の殻の色

ジュズダマは風媒花です。近種のハトムギと交雑してしまいます。ハトムギはジュズダマと交雑してしまうと次世代からジュズダマと同じような硬い殻の実が生るようになってしまい脱稃(だっぷ)が困難になってします。
この為、ハトムギ畑の近くに人為的にジュズダマを植える事は禁止事項です。

【 株の植替えについて 】
株を植替える場合には根茎から新芽が出てきた時(桜の花が咲き始めるころですが、屋内に取り込んで越冬させた場合には新芽が出てくるのが2週間程度早いです)に枯れた部分を取り除き土も落として植替えます。
この時に株割れ(根茎の一部が枯れて株が分離)していた場合には一つにして植えずに株分けして植えた方が育ちが良いです。
新しい根が出てきますので植替えの際に古い根が邪魔な時には10cmくらいにまで切詰めても大丈夫です。

※: 分蘖が10本にもなるほど大きく育った株は植え替えるのが非常に大変で困難です。 大きく育った株は植え替えるのをあきらめてそのまま3年ほど栽培し、連作障害によって株が小さくなってから植え替える事を考えた方が良いかもしれません。
越冬した株から土を落とした状態
越冬した株から土を落とした状態
越冬して芽が出てきた株
越冬して芽が出てきた株

【 畑で大量に栽培する場合 】
ジュズダマを露地栽培する場合には畝を作らずそのまま平地に植えることがほとんどですが、 畑で大量に栽培する場合となると灌水の手間の問題が発生しますので畝を作って栽培した方が手間を減らせます。

通常畑での植物の栽培は畝の盛土に植えますが、ジュズダマは湿った土の方が適正環境なので畝の谷間に植えます。
野菜を栽培している方にとっては常識外れに感じますが、田んぼはあぜ道が盛土、水を張った側が谷間そしてイネは水を張った側に植えて育てる事を考えれば理解できると思います。

畝の盛土は水はけを良くする為なので、ジュズダマを畝の盛土側に植えてしまうと水分が足りず育ちが悪くなってしまいます。 畝の盛土側の水分が谷間側に流れてくるのでその分、灌水の手間を減らせると云う訳です。
もっとも畑より田んぼだった所に植えた方が土壌的には適しています。ただイネと同じように水を張った田んぼに植えて栽培するのは極めて難しいです。

【 プランターで栽培したい場合 】
マンションのバルコニーなどでプランターに植えて栽培したい場合ですが、直射日光が全く当たらない日陰では育ちません。 直射日光が当たる時間帯がある場所での栽培が必要です。

ジュズダマの根は半径20cm、深さ15cmくらいまでしか広がらないので直径40cm、深さ15cmの容器の真ん中に植えれば根にストレスを与えずに栽培できます。主根は30cmくらいまで伸びるものもありますが、硬いものにぶつかると曲がって伸びるので問題ありません。
逆にあまり大きくしたくない場合はわざと小さい容器に植えて栽培するという手もあります。( ※矮小栽培
植木鉢やプランターのような水抜き穴が必要ないのでバケツや漬物のタルでも大丈夫です。
※: 素焼き鉢は乾燥しやすいのでジュズダマの栽培には不向きです。

土は園芸用の土なら大体何でも大丈夫ですが、赤玉土は乾燥しやすいのでバーミキュライトや腐葉土を混ぜます。植木鉢に何か花が植わっていた土の再利用でも大丈夫です。 但し、ラン用の軽石は根がはりづらいので適していません。
草丈が伸びるのであまりフカフカした土だと強い風が吹いた時に根元から倒れてしまいますのでご注意下さい。

プランターや容器に植える場合には土を入れる量は淵まで余裕がある高さまでにします。
ジュズダマに限らず植物は根が張ると膨張圧力で地表面が上昇してきます。根の張り方によっては3cm以上も上昇する事がありますので容器の淵の高さまでに余裕が無いと地表面が淵より高くなってしまい水遣りの水がうまく入っていかなくなってしまいますのでご注意下さい。

問題は連作障害に弱い事です。同じ土に連続で植えると極端に生長が悪くなります。
土を入れ替えるか家庭菜園のローテーションで3~4年に1回ジュズダマの植える番が回ってくるように栽培する必要があります。
尚、多年草なので根茎から芽が出てきます。そのままその株の栽培を続ける場合には2~3年は土を入れ替えなくても実がつく大きさにまで育ちますが生長は年々悪くなります。

密集して生えるとお互いが生長を阻害しあうので寄せ植えには不向きです。
※: 矮小栽培する場合は例外です。( ※矮小栽培

路地植えに比べてプランターや植木鉢だと真夏は水分不足になりやすいので水遣りに注意が必要です。
そういう点においてはタルなどの水抜き穴の無い容器で栽培した方が溜水ができる分、水遣りの回数を減らせるので管理がしやすいです。

プランター栽培での水遣り回数の目安
気温22度で2日に1回、気温26度で1日1回、気温30度で朝夕の2回、気温34度で朝昼夕の3回。
生育状態や湿度などで水遣りの回数が変わってきますので土の乾燥具合や葉のしおれ具合などで判断して下さい。

【 温室で栽培する場合 】
ジュズダマは気温が高い方がよく育ちますので温室で栽培する事を考える方もおられるかと思います。 温室で栽培する場合には注意点があります。

ジュズダマは直射日光が当たらないと育ちませんので光の透過率が悪いビニールやホコリで汚れたガラスハウスでは日照不足になる恐れがあります。光がよく差し込む温室である必要があります。
もう一点、ジュズダマは風媒花なので風が当たらない場所で栽培する場合には開花時期に扇風機や送風機で風を当てて花粉を飛ばしてあげる必要があります。


【 特殊な栽培方法に関して 】
ジュズダマは雑草扱いなので園芸植物のような生育をコントロールするような栽培技術は開発されていません。
近種のハトムギは歴史がある分、栽培技術が多く応用できるものもありますが、穀物としての栽培であり一般の方が園芸気分で扱うには難しい技術ばかりです。
実証実験を行っていないものもあり実際には実用的ではない栽培技術もあるかもしれませんが、生育をコントロールする栽培技術について紹介します。

【 矮小栽培について 】
草丈が150cmにまで育ってしまうとベランダなどでの栽培では大きくなり過ぎなので草丈を抑えた栽培が出来ないかと考える方もおられると思います。そこで矮小栽培について紹介します。
矮小栽培とは環境的阻害要因を逆手に利用して本来の草丈より小さく育てる栽培です。
園芸栽培で用いられている『矮化栽培』とは根本的に方法が異なります。

矮小栽培にはいくつか方法がありますが、ジュズダマの栽培で候補として考えられる方法を無難な方法の順に紹介します。

寄せ植えしてお互いを生長阻害させる方法。(密生栽培)
密生するとお互いが生長阻害し合う状況を利用して生長を悪くさせる方法ですが、密生させ過ぎると枯れてしまうものが出てきます。
筋蒔きで種蒔き(直蒔き)する場合には多くても10cm² に3株までになるように間引きします。これ以上に密生にしてしまうとほとんど実がつかなくなってしまいます。

小さい容器に植えて根詰まりさせて生長を止める方法。
これは盆栽に用いられている方法ですが、あまり小さな容器だと生長できず蕾すらつかなくなってしまいます。実が生る大きさにまでさせるには最低でも容量が1000ml(1L)以上の容器が必要です。
小さい容器に植えて行う矮小栽培には要注意な点があります。乾燥しやすい為、真夏は朝夕の2回は必ず水遣りが必要です。しかもタップリ入れる事が必要で怠るとたった1日で枯れてしまいます。

種蒔きを意図的に晩くする方法。
生長期間を短くする事によって生長しきらない内に花期を迎えさせ生長を止める方法です。この方法はギリギリまで生長を続けようとして花期が遅くなる傾向があります。(関東の場合6月に種蒔きする)
種蒔きが遅過ぎると雄花が咲かなくなってしまいますので意外と種蒔きのタイミングが難しい方法です。

越冬苗を使用する方法。
新しく矮小栽培用に開発した栽培方法です。7月に種蒔きをして苗のサイズで冬を迎えさせて越冬させ次の年に出た芽を苗として使用する栽培方法です。
越冬苗は種からより芽が伸び始める時期が早いわりに生長が遅くあまり大きくならない(通常の半分くらいの草丈までしか生長しない)特徴があります。
越冬苗の生長が遅い理由はまだ分かっていません。

直射日光に当たる時間の短い場所で栽培する方法。
この方法は雄花がほとんど咲かなくなる事が判明しました為、候補から削除致しました。(2018.10)

ある程度にまで育ったところで直射日光に当たる時間を短くして日照不足にして生長にブレーキをかける方法。
この方法は雄花がほとんど咲かなくなる事が判明しました為、候補から削除致しました。(2018.10)

ある程度にまで育ったところで水遣りを抑えて水分不足にして生長にブレーキをかける方法。
加減を誤ると枯死してしまうリスクがありコントロールが非常に難しい方法です。

ある程度にまで育ったところで剪定して草丈を詰める方法。
もっとも手っ取り早く簡単な方法ですが草姿が悪くなる問題があります。また剪定した先からものすごい勢いで貧弱な枝が伸びてきます。
枯らしてしまうリスクは低い方法ですが、観賞する観点から勘案すると採用に値しない方法かもしれません。

どの方法も失敗するリスクがあります。ジュズダマの栽培経験が無い方はプランターでの密生栽培(寄せ植え栽培)以外は選択しない方が良いです。
矮小栽培すると生長に大きなバラつきが発生する為、どの方法も任意の草丈にコントロールするのは極めて難しいです。
矮小栽培はあえて生長を阻害して大きくならないようにする栽培です。植物にはストレスがかかるので弊害が伴います。
ジュズダマの場合、矮小栽培すると実のつきが極端に悪くなります。この為、矮小栽培は観賞向けの栽培でジュズダマの殻を収穫して使用する目的の場合には向いていません。
矮小栽培した株
小さい容器(容量1000ml)に植えて根詰まりさせて栽培した株。右は1株で草丈が約1mに抑えられた状態。 左は更に寄せ植えにして生長を抑制した株。草丈が約80cmで更に20cm程草丈が抑えられた状態。

【 矮化栽培について 】
参考までに『矮化栽培』についても紹介します。
園芸植物に用いられる方法で環境的阻害要因を利用する『矮小栽培』とは異なり、矮化剤を使って矮化栽培する方法です。

イネ科植物にはイナベンフィドという成分が含まれる矮化剤が使われるようです。
節と節の間の生長を抑制するもので節の数は減らさずに草丈を抑えるので収量には影響しないとされています。
草丈が低くなる事で病害虫や強風による被害が減り結果的に収量が増えるというのがこの薬剤の売りのようですが、あくまでも稲作に対してであり試していないのでジュズダマにも同じ効果があるかは分かりません。

セリタード粒剤という商品があるようですが、現在は販売されていないようです。同じ効果の商品としてロミカ粒剤という商品があるようです。 稲作用なので 1袋 3kgもあり一般の人が購入して使うような量では販売されていないようです。

【 水耕栽培について 】
ジュズダマを屋内や屋上で水耕栽培出来ないかと考える方もおられるかもしれません。
ジュズダマの水耕栽培に挑戦した記録は見当たりませんが、トウモロコシの水耕栽培に挑戦している方の記録では水耕栽培にほぼ成功しておりジュズダマも栽培ノウハウを蓄積すれば水耕栽培出来るようになると思われます。

ジュズダマは根が水没していても問題ない植物なので水溶液に混ぜる成分がポイントだと考えられます。
ただ水耕栽培にかかる費用は露地栽培に比べ10倍以上とメリットに対してコストが見合わないというのが現状のようです。
※ ジュズダマの根を水没させたままにする実験では水面まで毛根が伸びてきたので根にも酸素供給が必要なようです。


【 病害虫について 】
勝手に生えているジュズダマでは病害虫をほとんど見かけませんが、人の手によって栽培すると何故か狙っていたかのように病害虫が発生します。

作物のように連作障害が発生します。同じ場所に連続で植えると生長が著しく悪くなります。
害虫はアワノメイガとイネヨトウの発生が一番被害が大きいです。近くでトウモロコシが栽培されている場合にはアワノメイガが飛来する確率が高いです。この場合にはアワノメイガ対策が必要です。
イネヨトウは近くにトウモロコシがある無し関係なく発生します。
アワノメイガやイネヨトウが発生した場合には必ず駆除する必要があります。放置すると被害が広がってしまいます。 また、一度アワノメイガやイネヨトウが発生したら繰返し発生するとみて対策する必要があります。

お詫び
今までは幼虫をよく調査しなかった為、全部アワノメイガの被害だと思っていましたが、半分くらいはイネヨトウの被害の可能性が高まりました。
詳しく調査し詳細が分かり次第アワノメイガの説明文を修正します。
(2020.04)
一部説明文を追加・修正しましたが現在も調査継続中で詳細が分かり次第説明文を修正します。(2023.03)

アワノメイガやイネヨトウが発生してしまった場合
アワノメイガの食害
アワノメイガの食害による茎の上部の枯死
アワノメイガの食害
茎の芯を食害進行したイネヨトウの幼虫
アワノメイガの食害
食害に遭った部分を刈取った後の再生長

イネヨトウはほとんどの場合が進入した穴から下に向かって食害進行して行きます。
イネヨトウは茎の芯を食べてしまうのでイネヨトウの食害に遭った部分より上は助かりません。
食害に遭った部分より下の節の上で茎を刈取りイネヨトウは確実に駆除します。
食害に遭った部分を残すより刈取った方が上部の再生長を促します。

但し、9月以降に発生するイネヨトウは根元に近い場所に進入する為、茎を刈取ると収穫できなくなってしまう場合があります。
この場合にはイネヨトウが進入した穴にスポイトを使って乳剤タイプの農薬を注入して対応するしかありません。

イネヨトウは最終には根茎に食害進行し根茎の中で幼虫態で越冬します。
11月頃に根茎に移動するのでイネヨトウが発生した年はジュズダマの収穫が終わったら即座に地上茎を刈り取り地上茎を処分するのが良いです。
刈り取った地上茎を土に埋めたり畑の脇に積んでおいたりするのはイネヨトウが越冬出来てしまうので良くありません。
根茎で越冬したイネヨトウの幼虫
根茎で越冬したイネヨトウの幼虫

いもち病
病気で厄介なのはいもち病です。一度発生すると農薬を使わないと撃退できず、撃退しないと毎年発生します。
ジュズダマのいもち病
いもち病の病斑が発生した葉
ジュズダマのいもち病
いもち病が進行した病斑
ジュズダマのいもち病
葉の裏から見たいもち病の病斑

ジュズダマのいもち病 ジュズダマのいもち病
いもち病が穂にまで侵攻して殻の表面に丸い凹みのできた病斑
 
殻の表面の丸い凹みが内側まで貫通して穴になり、殻の色付きを阻害して縦筋の斑が入った状態

ジュズダマに発生するいもち病に関しては詳しい研究がなされておらず詳しい事は不明です。
ハトムギのいもち病に関する調査でジュズダマに発生するいもち病は大きな被害は発生しないという記述がありましたが、当方の栽培においては症状の酷い株は収穫できなくなるなどの大きな被害が発生しています。
当方の栽培において発生しているいもち病はベンレートが効かないベンレート耐性菌のようです。いもち病に対する農薬は種類がありますが、他の薬剤にも耐性を持った耐性菌がいるかもしれません。
ベンレート耐性菌に対してはオリゼメート粒剤やコラトップ粒剤などの粒剤タイプが防除効果が高いようです。

病害虫対策はハトムギとほとんど同じですが農地での栽培用の情報しか見当たらないので、トウモロコシの家庭菜園の情報を参考にすると良いです。

※: 付近に農地が無い都心部や住宅地ならアワノメイガやイネヨトウの発生はほとんどありません。
都心部や住宅地での少量栽培であれば連作障害とアブラムシ以外の病害虫はほとんど気にしなくて大丈夫です。
春から初夏に発生するアブラムシにはジュズダマを枯死させてしまう程に害を及ぼす種がいる事が確認されました為、説明文を一部修正しました。(2023.03)
病害虫についてもっと詳しく知りたい方は病害虫とその他の虫についてをご参照下さい。

害獣
病害虫の他に今後問題になってきそうなのが害獣による食害です。
野菜同様、ジュズダマも野うさぎ・イノシシ・シカなどの野生動物に食害されやすい植物です。害獣による農産物の食害が年々深刻化してきておりジュズダマも例外ではありません。

特に移植した直後の苗が程よく柔らかく食べやすいので狙われやすいようです。
厄介な事に病害虫と違い農薬では被害を防げません。柵で囲うのが確実ですが、設置の労力も費用もばかになりません。手軽な防御法を模索中です。

【 台風対策について 】
台風による強風で茎が折れてしまったり根元から倒れてしまう事がよくあります。
1株毎に真ん中あたりでビニール紐でかるく束ねるようにすると防げます。1m50cm以上にまで生長した株の場合には50cmくらいの間隔で2ヶ所縛るとより安全です。
ジュズダマの台風対策
※: 地面に直接植えてある場合はこれでほぼ防げますが、プランターなどに植えてある場合にはプランターごと倒れてしまいますので更に何か倒れないものに縛り付ける必要があります。逆に台風の時だけプランターごと倒しておくという手もあります。

【 株を越冬させる場合 】
多年草なので次の年も根茎から芽が出てきますが、根茎が霜にあたったり凍結したりすると枯死してしまいますので越冬させる場合には霜よけ(土に埋めるか枯葉を厚く被せる)が必要です。
越冬させる場合には地上茎を10cm程残して刈り取ります。
ジュズダマは霜にあたらなければ地上茎が10cmくらいまでは生きた状態で越冬します。(沖縄などの暖かい地域では更に上の部分まで越冬します。)この部分に越冬する為の養分が蓄えられているので地上部を全部刈り取ってしまうと根茎に蓄えられた養分だけで越冬しなくてはならなくなり春に新芽を伸ばす為の養分が足りなくなってしまう事があります。

鉢植えなどで屋内に取り込んで越冬させる場合にはカラカラに乾燥してしまっても枯死してしまいますので時折水遣りをして適度に土を湿らせておく必要があります。
越冬した株は桜の花が咲く頃に新芽が伸び始めます。

【 収穫後の地上茎について 】
地上茎を稲わら代わりに使いたい場合には注意点があります。
一つはアワノメイガが発生した場合です。
アワノメイガが発生した年の刈り取った地上茎は本来は処分した方が良いのですが、焼却や廃棄処分が出来ない場所での栽培で畑に戻すしかない状況もあるかと思います。

アワノメイガが発生した年の刈り取った地上茎を稲わら代わりに使いたい場合には金槌などで地上茎を叩き潰して潜伏しているアワノメイガを確実に退治する必要があります。
9月以降に発生するアワノメイガは根元に近い場所に進入しますので根元から40cmくらいまでを叩き潰せばほぼ退治できます。但し、稀に40cmよりも高い位置に侵入したままのものがいますので確認する必要があります。 特に雪が積もらない地域では根茎まで移動しなくても越冬出来てしまうので要注意です。
進入口から30cm以上も食害侵攻するものもいますので進入口付近だけを叩き潰せば良いという訳ではありませんのでご注意下さい。
肥料作り用の粉砕機では運の良いものは生き残ってしまいますので粉砕機を使う場合には粉砕機に2回通すのが良いです。

残念ながらいもち病が発生したものはいもち病の病原菌が生き残ってしまうので稲わら代わりには使えません。畑に戻すしかない状況の場合には深い穴を掘って埋めるしかありません。
いもち病が発生した葉や地上茎をどうしても肥料に使いたい場合には沸騰したお湯で5分ほど茹でていもち病菌を死滅させれば使えますが、量が多いと現実的ではありません。

もう一つは茎が腐るまでにかかる期間です。
葉は1ヶ月程度で腐りますが、茎は2年かかります。
強度が無いわりには枯れた茎を食べる虫が少ない為、微生物による分解で時間がかかります。
この為、大量に敷き詰めると害虫の住処になってしまいますので注意が必要です。

【 ジュズダマの除草方法について 】
ジュズダマの栽培を辞めたくなった時にはどうしたらよいのか。
ジュズダマは雑草の中では根絶がもっとも簡単な部類の一つです。
ただ地上部の茎を刈り取っただけでは根茎から再生してきてしまいます。株ごと堀上げてしまえば良い訳ですが、「そんな力作業はできない」という方もおられると思います。 そこで株を堀上げずに駆除する方法を説明します。
ジュズダマの除草方法①

まずジュズダマの茎を根元から刈り取ります。
ジュズダマの除草方法②

次に株がはみ出さないように黒色のゴミ箱を被せ風で飛ばされないように重石を乗せます。
これで2ヶ月そのままにしておけば枯死します。
ジュズダマの除草方法③

画像は2ヶ月後の完全に枯死した状態。
※: この方法は10月以降に行った場合には根茎が完全には枯死せずに越冬して生き残る場合があります。
根茎には越冬する為の栄養分が蓄積されていきますので、この方法は越冬する為の栄養分が根茎に蓄積される前に行わないと効果を発揮できません。

この方法はジュズダマに限らず多くの草木の駆除に使える方法です。
尚、種子がこぼれ落ちている場合には3年程度は発芽してくる可能性があります。大きくならないうちに引き抜いてしまえば簡単に駆除できます。
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【 参考文献 】
 石田喜久男. 1981. ハトムギ -つくり方と利用法- 農山漁村文化協会
 ウィキメディア ジュズダマ https://ja.wikipedia.org/wiki/ジュズダマ

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